ひとつのぬいぐるみが誕生するまで
ケーセン社の動物ぬいぐるみ、そのデザインを担当しているなかで仲良しになったデザイナーがこの人、PETER STRAUBELさんです。
この方、顔が小さくて髪が長くとってもハンサム・・・と、羨ましい限りですが、
只今日本語も勉強中で簡単な会話や読み書きならできるご様子、更にカタカナを読んでたのにはビックリしちゃいました。
ここ最近の彼の作品はというと、
がりとんでも人気のあるこの子たちでした。
簡単に
「これですよー」
って教えてくれるけど、これ一つ作るのにも彼には大変な仕事があるのです。
ケーセン社の目指す動物ぬいぐるみを製作する為に動物園に通い、様々な動物のあらゆるポーズ、表情をスケッチし、写真を撮影、さらに動物そのものの観察を何度も何度も続けます。
工房に戻ると、どの動物のぬいぐるみを作るかを議論し、それが決まると次にたくさんのスケッチの中からその動物にあう一番いい表情、姿勢を選びます。
粘土型で平面のスケッチから立体を作り、どの位置で面を作るか全体のバランスをみながら調整し、型紙を作ります。
これと平行して制作する動物に合う各パーツの生地やパーツを選定するのですが、既製品で納得のいくものがない場合も多く、より質の良いぬいぐるみを作る為、既製品にない色を注文したり、時には生地そのものから特別注文する場合も少なくないようです。
たとえば足の裏のパーツやカエル、カメなどには、日本の優れた合成皮革を特別色で発注していたり、生地は独、仏、ベルギー、オーストリア、日本の各メーカーに、染や織を特注しています。
また材質につきましては表面は綿・ポリアクリル・モードアクリル等を、中身はポリエステル等、目と鼻には主にプラスティックを使用、動物によって変えていますが、動物の姿勢や特徴を表現する為一つの動物に40種類以上の異なった素材を使用する事もあるようです。
特に目はたくさんの種類を使用しており、同じように見えても色が微妙に違ったり・・・など、決して製品誤差ではないのです。
できた型紙を元に、厳選した材料を裁断してぬいぐるみの試作品を作るのですが、これまでに製品化したぬいぐるみは、どれも一回の試作で完成した事はないそうで、型紙から生地を裁断、仮縫い、縫い位置の微調整、型紙の微調整、それでもだめなら粘土型から作り直し・・・と、膨大な時間をこの工程に費やすのだそうです。
ケーセン社の動物ぬいぐるみは中身をしっかり詰めているのでどっしりとした安定感があるのですが、これは簡単に沢山中身を詰めればよいというものではありません。
型紙や縫製がしっかりしていないと形が崩れたり生地が破れたりしてしまいます。
そういったことも考慮に入れて型を修正し、細かいところまで注意深く縫製されているため、中身をいっぱいに詰めても形がくずれないのです。
こういった工程を繰り返した後、最終的な調整が済み、やっと製品化できる状態になるのですが、そうなるまでには長いもので3〜4年もかけるようです。
もちろん縫製は手がけミシンと手縫いで行っておりますが、小さな鳥や動物は特にこの縫製作業が難しいようです。しかしこの作業をひとつひとつ丁寧に行うことで柔らかさが生まれ、デリケートな曲線が表現されるのです。
余談にはなりますが、私は以前あることが気になり会長のシャッヘ氏に質問したことがあります。
それは既に製品化されていた動物ぬいぐるみなのですが、ひげがあるはずの動物でひげを付けられるサイズであるのにもかかわらず、ひげが無かったのです。一度に気になると、どうしても頭から離れず・・・。
シャッヘ氏はにっこり笑って私にこう言いました。
『試作段階ではほとんどのぬいぐるみにひげをつけるのだけれど、ひげをつけることによってかえってシルエットや印象が元の動物から離れる場合があるので、その場合はひげを意図的にはずすのですよ。』
私は感心していたのですが、当のシャッヘ氏はそんな話はどうでもいいから今年の新製品をみてくれ、と言わんばかりに手を引っ張り連れて行かれた先で、
『これはアルパカ・ベア』(アルパカの毛で作ったふわふわのクマのぬいぐるみ)
で・・・
『これはアルパカ・アルパカ』(アルパカの毛で作ったふわふわのアルパカ)
『ハッハッハッ!』
さすが元市長、少々一方的ではありますがショウマンシップというのか、人を楽しませることが大好きなようです。
ひとつの動物ぬいぐるみを作るまでに時間と労力を惜しまず、妥協を許さない心を持つデザイナーと、ちょっとおちゃめな会長、更には物静かで上品な社長が率いるケーセン社のぬいぐるみ、どうりで表情豊かでドッキリするはずです。
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